東京高等裁判所 昭和27年(う)993号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
(爭点)
被告人は青物商であるが、九月三日に右営業のため使用する目的で本件自動三輪車を買い入れ、それ以来無免許で本件事故の発生した同月二四日迄十回位青物仕入の為自宅と約半里隔つた野菜市場との間を往復運転して居り、事故の日は偶々営業のためでなく警防団の用務のため運転中に過つて婦人に衝突し同人を死亡させた。控訴趣意は被告人は当時未だ自己の営業に使用していたものではなく將来使用する予定であつたにすぎないから又当日はその営業のために使用したのでないから業務とは云えないと争つている。
(判旨)
被告人が本件事故発生前しばしば右自動三輪車を自己の営業のため使用運転していたことはさきに述べたとおりであつて、単に使用予定の状態にあつたに止まるものとは認められない。もつとも、被告人が当時まだ運転免許を得ていなかつたことは原判決認定のとおりであるが、およそ刑法第二一一条にいわゆる業務とは各人が社会生活上の地位に基き継続して行う事務をいうところ、被告人が右自動三輪車の運轉を現に継続して行つており、また將来も引き続き継続して行う意思を有していたことはさきに認定したところから明らかであるから、無免許であつたことはなんら業務たるに妨あるものではない。……(中略)……運転を業務とするというのは前述ように運転それ自体を反覆継続して行うことをいうのであつて他の一定の業務(ここでいえば被告人の青物商営業)のために運転するという意味ではない。そして、被告人が運転そのものを反覆継続していたと認むべきことは前段説明のとおりであり、本件事故当日の運転もまたその一環としてなされたものであることは明白であるから、それが被告人の営業と無関係になされたからといつて本件の過失が業務上の過失でないということはできない。